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円安の影響

ここ数日内のシリア情勢の緊迫化を受けて足元では為替の方向感が定まらないものの、2011 年の1ドル75 円台を考慮すれば今もなお円安基調にあるといえる。昨年の暮れから続く円安基調によって上場企業は為替差益や売上増加等の恩恵を受けているが、浜松地域の中小製造業者についても同様、円安は良い影響を与えているのだろうか。

当研究所が本年6 月におこなった調査によると、円安は「良い影響がある」と答えた企業18.3%に対して、「悪い影響がある」と答えた企業は18.0%であり、「どちらともいえない」企業は52.3%であった。良い影響、悪い影響ともにほぼ同数と甲乙つけがたい。

ただし、従業員規模別でみると傾向は異なる。従業員が10 名未満の企業は円安を「悪い」とする企業が多く、10〜29 名の企業についても同じく円安を「悪い」とした。逆に30 名以上になると「良い」が「悪い」を上回った。企業規模が大きくなるほど「良い」とする企業は多く、円安のメリットを強く受ける結果となっている。

以前であれば円安時には日本の価格競争力が増し、海外からの受注が増えて売上増加が見込めたが、今は現地生産と現地消費が進んでいるため円安になっても仕事が回ってこない傾向が強まっている。仮に受注が増えたとしても海外企業との競争のなかコストダウン要請は止まらず、中小企業にとって収益構造は厳しいといえる。

今後、どのような事業を展開していくかとの別の問いに対して、6 割の企業が国内での取引開拓を挙げ、海外への展開を挙げたのは2 割にとどまった(複数回答)。海外進出が進むなか国内での受注は縮小していくことが予想される。国内に残るのであれば為替水準や価格競争にも左右されない技術や販売力を身に付ける必要がある。

グラフ:円安の影響

本稿は9 月5 日静岡新聞「目で見る浜松経済」掲載予定です。
静岡県西部地域しんきん経済研究所とは遠州信用金庫と浜松信用金庫が共同で設立したシンクタンクです。

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