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ホーム > しんきん経済レポート > 2011年No.16 浜松市の工業統計の推移

浜松市の工業統計の推移

2010 年工業統計(速報値)によると、浜松市の製造品出荷額等は1 兆9795 億円となった。2 兆円を割り込んだのは2005 年の12 市町村合併以降初めて。製造品出荷額等のピークはリーマンショック前の2007年の3 兆2257 億円。わずか3 年で1 兆2462 億円、率にして38.6%減少した。磐田市、湖西市は2009 年を底に増加に転じたのに対し(磐田市7.1%増、湖西市13.6%増)、浜松市は出荷額等の減少に歯止めがかかっていない。

従業者数も、製造品出荷額等と同様に、リーマンショック以降の減少が著しい。ただし、リーマンショック前まで遡れば、製造品出荷額等と従業者数は異なる動きをみせている。

まず製造品出荷額等の推移をみてみる。1990 年代前半から2000年代前半は、現在にも匹敵する円高だった時期もあったが、製造品出荷額等はほぼ横ばいで推移している。2000 年代半ばになると、為替水 準が円安で、世界経済も好調だったため、製造品出荷額等は急増している。

次に、従業者数の推移をみてみる。1990 年代前半から2000 年代前半は、円高が是正された1990 年代後半に微増となっているものの、減少傾向が続いている。2000 年代半ばの円安時も、従業者数は僅かな増加にとどまり、1990 年代の水準までは回復できなかった。20 年という長期の視点でみると、従業者数はほぼ右肩下がりで減少している。

現在は、超円高に加え、高い法人税、自由貿易協定の遅れなど、国内製造業には6 重苦があるといわれている。国内製造業の競争低下要因を解消しなければ、従業者数の減少は止まらないだろう。しかし、仮に競争低下要因を解消したとしても、製造品出荷額等は回復するが、従業者数は歯止めをかけるのが精一杯かもしれない。ただし、この分析には製造業のイノベーションが考慮されていない。過去、浜松は新たな基幹産業を生み出すことにより、雇用を拡大してきた。次世代環境車、光エネルギー産業などの新基幹産業の育成が、雇用の創出につながるであろう。

グラフ:浜松市製造業「製造品出荷額等」「従業者数」の推移

本稿は11 月3 日静岡新聞「目で見る浜松経済」掲載予定です。
静岡県西部地域しんきん経済研究所とは遠州信用金庫と浜松信用金庫が共同で設立したシンクタンクです。

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