リサーチニュース リサーチニュース

ホーム > しんきん経済レポート >コロナ禍で新卒採用に異状あり

コロナ禍で新卒採用に異状あり

2021年6月3日

大学生等の採用スケジュールは、2021年春卒生以降、経団連から政府主導のルールに移行している。会社説明会などの広報解禁が3月以降、面接などの選考が6月以降、正式な内定発令が10月以降としているが、実質的な採用活動は早期化が進んでいる。浜松地域の新卒採用の状況はどうであろうか。

浜松商工会議所が今年3月に行った「第4回新型コロナウイルス感染症に関するアンケート調査」では、2022年新卒採用計画について2021年採用人数との比較で尋ねている。回答した307社全体では、『採用する(増やす+変わらない+減らす)』は58.7%あり、その内「変わらない(同程度)」が40.4%を占めた。また、「増やす」(14.0%)が「減らす」(4.3%)を上回っている状況だった。特に「変わらない」は、従業員規模が大きくなるほど高くなる傾向があった。コロナ禍の中、企業体力の違いが、採用においても格差を招いていることがうかがえる。

また、そもそも「採用予定はない」との回答も全体で39.7%あった。従業員規模別で内訳をみると、従業員規模が小さくなるほど、「採用予定はない」が高くなる傾向があった。特に10人未満の事業所は、「採用予定はない」と答えている割合が8割を超えている。業種別では、コロナ禍で苦戦している飲食・宿泊業で、「採用予定はない」が6割近くあった。

このように、従業員規模により、採用格差が出ているなど、コロナ禍で新卒採用も以前と様変わりしている。また、選考活動へのオンライン導入で、学生の人となりを判断する情報が乏しく見極めも難しくなっている。ワクチン接種は始まっているものの、新型コロナウイルスの収束はいまだ不透明である。一方で人手不足の時は、採用には苦労していた中小企業も、コロナ禍で雇用環境が変化し、逆に採用のチャンスととらえ採用を増やしている企業も1割程度あるのも事実である。ピンチをチャンスととらえ、経営環境の変化に対応していくことが、今求められている。

図表 浜松商工会議所「第4回新型コロナウイルス感染症に関するアンケート調査」をもとにしんきん経済研究所作成
出所:浜松商工会議所「第4回新型コロナウイルス感染症に関するアンケート調査」をもとにしんきん経済研究所作成

しんきん経済レポート一覧へ