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再注目される「個人情報保護法」改正

2021年8月5日

同窓会名簿、自治会名簿、マイナンバーカードなど日常生活の中で個人情報が使われる場面は多い。個人情報とは、生存する個人に関する情報であり、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述または個人別に付された番号、記号その他の符号により当該個人を識別できるものをいう。この個人情報を保護する目的で制定されたのが「個人情報保護法」である。2003年に成立し、2005年4月に全面施行された。

このところ「個人情報保護法」が再注目されるようになったきっかけは、2021年3月17日、LINEの個人データに中国の委託先企業がアクセス可能な状態にあった問題が報道されたことである。この問題を受けて、同月19日には、総務省がLINEの行政サービスを停止したうえで、全国の自治体に対して利用状況の調査を要請する事態に発展した。さらに、4月23日、政府の個人情報保護委員会は、LINEに行政指導したと発表した。

このような中、「個人情報保護法」が改正されているのを皆様ご存知だろうか。2020年12月12日から一部が施行されている。この施行で事業者の罰則が上限1億円(改正前30万円)になるなど、法定刑が厳罰化されたことから、事業者が法律違反をした場合、どのような責任が発生するのかを整理しておくことが大切である。例えば、罰金刑が事業者に科せられた場合、交通違反の罰金と異なり、指名停止等に該当することになる。

今回の改正では、わずか1日で消去する個人情報についても保有している場合には、本人からの開示請求の対象となった。加えて、個人情報の第三者への提供や第三者から受領する場合には、その授受に関する記録も開示請求の対象になるなど、内部体制の整備も必要になってくる。

現在、世界レベルで、社会のあらゆる分野において、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進み、わが国でもDX推進の強力な司令塔として「デジタル庁」が来月9月に発足する予定である。健全なデジタル社会の実現のためには、個人情報保護とサイバーセキュリティーが不可欠であり、今後の事業・生活の発展のために、「個人情報保護法」の遵守は企業にとっても、個人においても、より必須な取り組みとなっていくのではないだろうか。

刑事罰 懲役刑 罰金刑
改正前 改正後 改正前 改正後
命令違反 行為者 6ヶ月以下 1年以下 30万円以下 100万円以下
法人等 なし なし 30万円以下 1億円以下
不正提供 行為者 1年以下 1年以下 50万円以下 50万円以下
法人等 なし なし 50万円以下 1億円以下
虚偽報告 行為者 なし なし 30万円以下 50万円以下
法人等 なし なし 30万円以下 50万円以下

200612_gaiyou.pdf (ppc.go.jp) 個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律(概要)

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