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労働生産性(上)

2022年12月15日

コロナ禍以降、経済環境は一変したように見える。
国際的なサプライチェーンの分断に加えて、燃料価格が高騰していたところ、外国為替相場が大きく変動して円貨の購買力が低下した。この結果、物価が急激に上昇する要因が発生しており、物価の上昇が賃金の伸びを上回っているから、実質的な賃金は減少し国民生活は厳しさが増している。政府では実質賃金の改善のためには、企業の「生産性の向上」こそ根本的な解決策であるとしている。
そこで今回と次回で、浜松市内の製造業の「生産性」について考えてみたい。

「生産性」とは一般的には「労働生産性」を指し、それは「従業員一人当たりの付加価値額」であり、数値としては「付加価値額÷従業員数」で求められる。「付加価値額」には様々な計算方法や定義があるが、主な構成要素は「人件費」「減価償却費」「経常利益」である。平たく言えば、給料をたくさん支払い、設備投資を積極的に実施して、会社が儲かれば「付加価値額」は大きくなり、それを少ない従業員数で達成すれば、「労働生産性」が向上する。

【表1】は市町村合併後の2008年(平成20年)を起点(100)としたコロナ禍前の2019年(令和元年)までの労働生産性の推移である。浜松市内製造業ではこの期間で96.7へと減少しており、3.3ポイントのマイナス成長であった。

図表 浜松市内の製造業の労働生産性
出典:浜松市『工業統計結果報告書』、経済産業省『産業別統計表』から、しんきん経済研究所が作成。いずれも従業員4名以上の事業所が対象。なお、2011、2015年は工業センサス実施年のため公表なし。

一方で全国製造業と同様の比較をすると、同期間で107.2にまで拡大しており、浜松市内製造業は生産性において格差をつけられてしまっているのが現状なのである。
賃上げとの関連で言えば、2019年には2008年当時よりも、源泉である労働生産性が低下して賃上げを実施する余力は小さくなってしまっていた、と言えるだろう。

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