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労働生産性(下)

2023年1月5日

今回は前回(12月15日)に続き、浜松市内の製造業の「生産性」について考えてみたい。

前回では浜松市内製造業の労働生産性は2008年から2019年までに3.3ポイントのマイナス成長であったが、全国製造業では7.2ポイントのプラス成長であったことを述べた。労働生産性は主に「人件費」「減価償却費」「経常利益」から構成される付加価値額を従業員数で除したものであり、平たく言えば従業員一人当たりの雇用と設備投資と利益の合計額である。今回の【表2】では「労働生産性」の源泉とも言える付加価値額の推移について2008年を100として比較している。

期間中では浜松市内、全国とも一時は減少傾向にあった付加価値額が2013年に回復軌道に入っていく様子がうかがえる。しかし、全国企業ではその後も回復傾向が継続してきたのに対して、浜松市内製造業では、減少もしくは停滞の状態にある。
2019年では、2008年当時に対して浜松市内製造業は76.9であるが全国製造業では98.9である。全国製造業も約10年間でマイナス成長であったが、浜松市内製造業はそれにさえも20ポイント以上の遅れをとってしまっているのである。

しかも、これらはコロナ禍・ウクライナ侵攻・円安前のデータからの試算結果であり、今般の原材料価格の高騰は容赦なく企業の付加価値額を削り取り、労働生産性を低下させ、企業は賃上げの余力を縮小させられたてしまったはずである。ものづくりの街である浜松市の製造業も、これまでの事業の枠にとらわれることなく、新しい市場・技術・製品に対して、否応なくチャレンジしなければならない時期に直面している。

図表 浜松市内の製造業の付加価値額
(出典:浜松市『工業統計結果報告書』、経済産業省『産業別統計表』から、しんきん経済研究所が作成。いずれも従業員4名以上の事業所が対象。なお、2011年、2015年は工業センサス実施年のため公表なし。)

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