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空き家対策は行政と民間の協力が不可欠

2023年4月5日

5年ごとに実施され、直近2018年の総務省「住宅・土地統計調査」では、全国の空き家の割合13.6%に対し、静岡県は16.4%、浜松市は13.0%であった。政令指定都市で空き家の割合が最も高い都市は大阪市の17.1%、最も低いさいたま市は9.4%で政令指定都市の平均値は12.4%であった。

空き家の増加は様々な問題を誘引する恐れがある。空き家として放置されることで、景観の悪化や不法投棄の増加、災害時倒壊リスクなどの懸念が高まる。また、不動産市場の流通阻害、都市のドーナツ化に伴う行政コストの増加にも繋がる。多くの自治体は空き家減少対策を行っており、浜松市も生活インフラの整備や空き家ワンストップ相談会の実施などで空き家の減少を図っている。2016年に空き家の譲渡所得の特別控除制度(譲渡所得金額から3千万円を特別控除する制度)が創設もあり、2018年の浜松市の空き家の割合は2013年の13.9%より0.9ポイント改善された。

2020年、浜松市では一定の条件を満たした空き家等の除去に対する解体費用の3分の1、上限50万円を補助する制度を創設した。また、空き家の売買、賃貸の情報を空き家利用希望者に対して紹介する「空き家バンク」を開設し空き家の減少を支援している。

各種施策を実施しているのにも関わらず、空き家が思うように減らない背景には、間口、駐車場、日照、立地等に問題がある空き家が多いということに加え、核家族化の進行、高齢者世帯の増加などの社会的要因がある。また、相続が未確定のため不動産の真の所有者が決まらない、空き家を除去して更地にすると固定資産税の軽減税率の特例がなくなるといった空き家所有者側の要因もある。有効な空き家対策を行なうには、行政と民間の連携を今以上に幅広く深めていく必要がある。不動産業、宅建士、建築施工業、空き家コンシエルジュなど住宅に関連性の高い事業者だけでなく、飲食業や観光業、地方創生に意欲的に取り組んでいる地域金融機関などとも積極的に協力し、空き家所有者に有益な提案を行っていく必要がある。空き家をリノベーションすることにより、商業施設などで有効活用することができれば地域の活性化にも繋がる。浜松市でも人口が減少となっている現状で、今後、空き家を増やさないためには、行政による法整備と、ビジネスチャンスを見出そうとする民間の積極的な活動の両輪が必要だ。

図表 二輪車登録台数の前年比増加率
(出典:総務省「住宅・土地統計調査」資料をもとにしんきん経済研究所で加工作成
(政令指定都市の中で最も空き家の割合の高かった大阪市と低かったさいたま市を抽出)

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