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約8割は賃上げ「効果あり」を実感するも・・・

2023年7月20日

今春は多くの企業で賃上げが実施された。企業経営者の立場からみると、賃上げは企業業績の下降要因になりかねないが、一方で適正な賃金を支払わなければ人材の確保が難しくなる。当研究所が定期的に実施している景気動向調査によると、コロナ禍に苦しんだ過去2年間であっても県西部の中小企業では人手不足感が継続しており、各社は人材確保に苦慮している。そこで、これまで賃上げを実施してきた企業に対して、人材の確保という観点からは賃上げによって、どのような効果が得られたのかについて7月にアンケート調査を行った。

結果は、最も多い41.9%の企業が「社内のモチベーションが向上した」と回答し、続いて「特に効果はなかった」の26.0%であり、約1/4の企業では賃上げしても人材確保には効果がなかったと回答した。また、「定着率が向上した」は14.8%の企業が実感している一方で、新しい人材の導入という点では「必要な人数・必要なスキルを持った人材を確保できた」と強く感じる企業は12.2%であった。

約8割の経営者は賃上げなどで給与水準を引き上げると社内のモチベーションが上昇し、従業員の定着率が向上するなど良い効果を実感しているようだ。ただし、「賃上げ」だけでは、企業は欲しい人材を確保することが難しくなっていることも事実である。この結果を従業員規模別で見ても、業種別で見ても傾向に大きな差異は見られず、どうやら企業規模が大きくても小さくても賃上げは人手不足を解消する決定的な手段にはなり得ていないのである。では、欲しい人材を獲得するにはどうしたらよいだろうか?

その一つは、今の従業員たちが働いている労働環境を改善することではないだろうか。労働時間や作業環境や研修体制の整備など、従業員が仕事に打ち込める環境を整え、やりがいを感じて生き生きと働ける職場を創ることである。報酬面での改善も大切であるが、これからは、企業規模の大小を問わずに快適な職場を提供することが働いてくれる人を募るための最低の条件となっていくだろう。

 

図表 中小企業経営者が最も強く認識する賃上げの効果
出典:しんきん経済研究所2023年7月調査から作成

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