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ビジネスマッチング等で産業振興

2023年8月17日

今から7年前の2016年、浜松市の製造品出荷額等が静岡市に抜かれた時は、衝撃が走った。その後も状況は変わらず、さらに差が拡大している。浜松市の製造品出荷額等がリーマンショックで大きく減少した後、さらに減少し、増加傾向にあった静岡市を下回ったのが実態である。
なぜ工業都市を自負する浜松市が、静岡市に抜かれたままなのか。下のグラフは浜松市全体と上位3区の製造品出荷額等の推移をグラフ化したものである。それによると、北区は、順調に増加しているが、中区と南区の製造品出荷額等が減少し、北区の伸びを相殺してしまっているのである。これは、中区・南区から北区に企業が移転したか、仕事自体が減ったことなどが考えられる。残りの区は、ほぼ横ばいであった。いずれにせよ、製造品出荷額等を増加させていく努力が必要である。
しかし、浜松市も手をこまねいていたわけではない。「企業立地推進課」が、積極的に企業を誘致または立地企業に補助金を出してきた。補助金制度が創設された2007年度からの15年間で補助金を交付した約2百社からの税収は計約285億円に上るとともに、新規雇用従業員は3千人を超え雇用効果も大きいという。近年では、浜松SAスマートICにも近く、優れた交通アクセスの好立地にある、第三都田地区の工場用地が、完売となっている。今後、精密減速機で世界シェア60%を占めているナブテスコの工場も稼働する予定である。
では、コロナ後の産業振興はどうあるべきか。第一に「モノづくりのまちのポテンシャルをさらに発揮」することである。技術力があっても活かし切れていない部分がまだまだあると思う。第二には「産業の芽の育成」である。コロナ禍でサプライチェーンの崩壊など経済環境が変わり、新たな環境対応に迫られている。そのような中で、これからの浜松、さらには日本を背負って立つ産業の芽を育てることが大切である。第三には、「マッチングの機会の創出」である。個々の企業のポテンシャルは高いので、マッチングをすることで新たな相乗効果が出ることが期待される。市や金融機関などの支援機関は、より積極的にマッチングの場を提供してほしいものである。

 

図表 浜松市の上位3区における製造品出荷額等の推移
出所:工業統計調査・経済構造実態調査をもとにしんきん経済研究所作成

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