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浜松市から日本の食卓を守る

2023年12月7日

秋のサンマに代表されるように、旬の季節がやってくると「記録的な不漁」が報道されることが増えてきたようだ。静岡県内の特産水産物でも遠州灘沖のシラス、由比のサクラエビなど、これまで私たちが普通に楽しむことができた食材が獲れなくなっている。そこで、このような不漁が市民の家計に及ぼしている影響を調査した。

生鮮魚介類の年間消費額は10年前の2013年を100とすると、2022年の浜松市は78(36,366円)まで減少している。全国でも減少はしているものの、その幅は浜松市よりも少なく、2022年は89(40,192円)であった。浜松市では過去10年間で全国を上回るペースの「魚介離れ」が進んでいる。

また、「魚介離れ」は消費量にも表れている。2013年には浜松市民は年間で約29Kgの生の魚介類を購入して家庭で消費していたが、2022年には約12Kg減少して、約16Kgとなっており、全国の平均でも約11Kg減少の約20Kgとなった。特にアサリの消費量は年間1,155gから206gにまで約82%減少した。これは近県で海のない長野市、甲府市の半分以下である。消費の減少には浜名湖産のアサリの不漁が大きく影響していると思われ、浜松市民の『浜名湖産アサリ』への悲哀が見て取れる。

生鮮魚介類の消費減少は、価格の上昇によって家計の節約傾向などで他の食材にシフトしていること、安価な加工食品の使用頻度が上がっていることなど経済的な要因が大きいだろう。加えて、最も懸念されることは、地球温暖化による海水温の上昇により魚介類の生息域が変化もしくは生息できなくなってしまっているのではないか、という問題だ。これは短期間での解決は非常に難しい。

しかし、このまま『浜名湖産アサリ』が先細っていくのはあまりにも惜しい。日本の海や湖で育った希少な水産資源の保護体制を確立し養殖技術やブランドを高めて、生鮮魚介類で浜松市から日本の食卓を守り豊かにすることに期待したい。

 

図表 過去10年間の生鮮魚介類に消費量と金額
【出典】総務省 家計調査(20132022年)から当研究所が作成 

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