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価格転嫁には自社の強みを高めること

2024年4月4日

2024年度は、大手企業を中心に昨年を上回る賃上げが見込まれる。一方、大企業ほど内部留保が潤沢ではない中小企業は、賃上げに対して慎重な対応をとっている企業が多いと思われる。

そこで、県西部の中小企業経営者に人件費の上昇分について価格転嫁できているかどうかを尋ねたところ、全体では「転嫁できていない」が62.3%となり過半数を上回った。さらに、業種別でみると製造業は69.6%で、他業種と比べて価格転嫁できていないことがわかった。この結果から製造業では、賃上げをしても価格転嫁できずに収益を圧迫すると考えてしまう経営者が多いのではないかと推察される。

製造業では、仕入価格の高騰分やエネルギー価格の上昇分を比較的数値化しやすいが、人件費の上昇分を数値化することは難しい。取引先に対して客観的な根拠に基づいて価格交渉を行うためには、従業員一人が生み出す生産額による従業員数の適切性と、持続的な生産をするために必要な人件費を算出することが必要だ。これらの指標を作成するには、難しくても自社の状況把握に努めなければならない。

価格転嫁には、コスト上昇分を原価計算して交渉に臨むことも必要である。しかし、中小企業であるからこそ他社に負けない品質と、適正な価格を設定したうえで、効率的な生産による短納期を追求することが最も重要と言えるだろう。

図表 人件費の上昇分を価格転嫁できているかの調査
出所:しんきん経済研究所が独自に行ったWEBアンケート結果

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