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スタートアップの街、浜松へ

2024年7月18日

浜松市には、「やらまいか精神」が脈々と引き継がれている。この「やらまいか精神」を具現化し、スタートアップ企業(新興企業)を支援する目的で、様々な支援策が浜松市では用意されている。その中でも特徴的な事業が、「ファンドサポート事業」である。これは、市認定ベンチャーキャピタル(VC、投資会社)が将来性を見込んで投資したスタートアップ企業に対し、VCの投資額と同額を上限に交付金を支給する制度である。

浜松市ホームページ(産業部スタートアップ推進課)によると2019年度から2022年度の採択企業は、32社であり、交付金額は総額で11億83百万円となっている。単純平均で1社当たり約37百万円の交付がされていることになる。ファンドサポート事業は、手厚く画期的な事業である一方、多額の公費が投入されているため、単なるバラマキにならないように注意する必要がある。                      

そこで、ファンドサポート事業の検証・効果測定が必要になる。このファンドサポート事業について、2019年度から2022年度の4年間で、「経済波及効果*」が21億86百万円になっていることを浜松市が明らかにしている。11億83百万円の交付金の投入に対して約2倍の経済波及効果があったことになる。

浜松市の成長を長らく牽引してきた輸送用機器産業は、EV化などにより100年に一度の大変革期を迎えているため、将来浜松市を背負って立つ新産業の育成が課題となっている。今後のファンドサポート事業の課題としては、2つ挙げられる。まず、第1に、波及効果は個別企業の波及効果の合計であるので、個別企業のフォローアップをしっかりしていく必要がある。第2に交付金を提供するために、浜松市に拠点を設けてもらっているので、いかに浜松市に根付いてもらえるかが重要である。いずれにせよ、ファンドサポート事業は、浜松市の将来を考えた成長戦略であり、しっかり腰を据えて取り組んでいかなければならない。

*経済波及効果とは、ある出来事が起こることで、特定の地域や産業に新規需要が発生し、その需要が他の産業へ連鎖的に波及していくことで、経済全体に与える影響のことを指す。 

図表:ファンドサポート事業実績
浜松市HP(産業部スタートアップ推進課)をもとにしんきん経済研究所加工作成

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