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乱高下する為替相場と想定為替レートの動向

2024年8月29日

乱高下する為替相場とその影響

このところ、為替相場が激しく動いている。2024年1月に1ドル140円台だった円相場は、主に日米金利差を背景として春以降急速に円安が進み、6月には一時161円台と約38年ぶりの円安水準まで下落した。しかし、8月に入り状況は一変、7月に日銀が利上げを行い、米国の利下げ観測も高まったことから日米金利差が縮小するとの見方が強まり、円相場は8月5日に一時141円台まで急速にドル安・円高が進んだ。現状では、140円台半ばで推移している。

企業業績への影響はどうか。24年4〜6月の平均為替レートは、1ドル=約156円と前年同期間の137円に比べ大幅に円安(約19円)であったため、これが追い風になり、主要自動車メーカー7社の24年4〜6月期の営業利益は前年同期比12%増加した。トヨタ自動車、ホンダ、スズキは、同期間としては最高益を記録している。この円安によって、トヨタ自動車は3700億円、スズキは375億円の利益押し上げ効果を得た。

為替レート推移 注:公示レート(日次)


主要企業の想定為替レート

トヨタ自動車、スズキ、ヤマハは、25年3月期の想定為替レートを145円としているが、直近の決算報告では、トヨタ自動車とスズキはこれを据え置いた。一方、ヤマハは151円と円安方向へ見直した。ヤマハ発動機は、24年12月期の想定為替レートを当初予想の140円のまま据え置いている。

海外で利益を稼ぐ多くの製造業にとって、円高は利益を押し下げる要因となる。スズキは、海外の各通貨の為替レートが1%変動した場合の営業利益への影響額(感応度)を試算しており、その額(通期)は、インドルピーで38億円、ユーロで22億円、米ドルで14億円としている。一方、ヤマハ発動機は、1円の変動が営業利益に与える影響額(通期)を米ドルで16億円、ユーロで11億円と試算している。

為替相場は、引き続き、日米の金融政策や経済状況によって大きく左右されることが予想される。この他にも地政学的リスクや米大統領選挙などが波乱要因となる可能性がある。為替相場の変動は、当地の製造業の業績にも少なからぬ影響を及ぼす。自社の収益やコストへの影響について、この機会に改めて分析してみてはいかがか。

各社の想定為替レート(ドル)
出所:各社決算報告資料からしんきん経済研究所が作成

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